ミルトン・エリクソンという心理学者と、あるおばあさんの実話です
ある時、エリクソン博士の旅行先に、お金持ちのおばあさんが訪ねてきて言いました。「私はお金に不自由は全くなく、大邸宅に住んでいます。イタリアから取り寄せた見事な家具に囲まれて、コックが毎日、素晴らしい料理を作ってくれます。園芸は好きですが、身の回りのことは全部メイドがやってくれます。けれども私ほど不幸な者はいません。寂しくて寂しくてたまりません」博士はその話を黙って聞いていました。「わかりました。あなたは教会に行きますか?」「時々行きます」「では、あなたが行っている教会の人たちのリストを作って、誕生日を書き入れてもらいなさい。そしてあなたは、育てた花に綺麗なカードを添えて、誕生日が来た人の玄関前に、置いておきなさい。ただし、あなたからということは知られてはいけませんよ。もしそれで幸せになれなかったら、また私のところにいらっしゃい」と博士は言いました。その老婦人は、さっそく試しました。朝三時に起きてこっそり鉢を届けるようになりました。そのことが町では「天使が来た!」と評判になりました。その人はエリクソン博士に電話をかけて、「宿題は成功しています」と報告しました。博士は「あなたは、まだ不幸ですか?」と聞くと、老婦人は「えっ、私が不幸だなんて・・・」と答えます。「でも、あなたは半年前に私のところに来て、『私は、お金もあるし立派な家もあるけれど、寂しい』と、私に話したではありませんか?」とエリクソン博士が言いました。
3ヶ月が経ったクリスマスの朝、その老婦人からエリクソン博士にまた電話がかかってきました。「先生、今日のクリスマスほど不思議なクリスマスはありませんでした。門のそばに置いた大きなクリスマスツリーの下に、私の必要なクリスマスプレゼントがたくさん置かれていました。誰から贈られたのかわかりません・・・」エリクソン博士は言いました。「是非、受け取ってください。あなたが庭に種を蒔くと、その種は花になってあなたのところに返ってきます。あなたは小さい種をいっぱい蒔いたから、立派な花になってクリスマスに返ってきてくれたのですよ」